先日こんな相談を受けました。
自分も一級建築士を目指している大学1年生です。本当に初心者でどこから手をつけたら良いのかが分からない状態です。建築士になるためのおすすめの参考書や学習方法を教えて欲しいです。
こんな疑問にお答えします。
私のことを簡単に自己紹介すると、ゼネコンで10年ほど働いていて、一級建築士も持っています。
この記事はだいたい2分くらいで読めるので、サクッと見ていきましょう。
一級建築士を学生のうちから目指すなら○○をしよう
さっそく結論ですが、学生のうちから一級建築士を目指すなら、以下の2つのことをしましょう。
理由は、知るべきことが何かを知っているのと、何も知らずに勉強するのでは、効率が段違いだからです。
そして、製図の決まりを学生のうちに覚えておくのはメリットしかありません。
なぜなら、製図試験の対策を、学校の授業で十分にできている学校は、ほぼ無いからです。
社会人になってからは勉強する余裕がありません。
特に、製図試験の勉強は学生のうちにしておくと100%差が付きます。
それでは、
- 過去問を使って、知るべきことが何かを知る
- 良作の図面を使って、製図の決まりを覚える
の2つのことについて説明していきましょう。
過去問で知るべきことを知る
学科試験対策は、過去問を使って知るべきことを知りましょう。
知るべきことを知る、というのは、試験範囲を把握するということです。
試験範囲を把握する
なぜなら、一級建築士になるという目標が決まっているのですから、何を覚えなければいけないのかわからないと、効率的に勉強できないからです。
例えば、学校の試験を考えてみてください。テスト範囲というものがあったと思います。テスト範囲があったから、どこからどこまでを勉強すればいいのかわかりましたよね?
では、テスト範囲がわからなかったならどうだったでしょう?どこから出題されるかもわからず、何を勉強すれば良いかもわからないでしょう。
このように、勉強すべき範囲を事前に知るということは、とても大切です。
ですので、過去問を使って、知るべきことは何なのかを知りましょう。ちょっと見るだけなら、こちらで過去問をダウンロードできるので、試しに見てみるのもいいでしょう。
解説が必要なら、過去問題集を買った方がいいです。
こちらでおすすめの過去問を紹介していますので、興味があればご覧ください。
ですが、「そもそも基礎知識も無いから過去問を見てもよくわからない」といった意見もあります。
確かにその通りで、基本的な用語もわからないと、何を言っているかすらわかりません。
建築の用語集を買う
ですので、用語集を買って、知らない用語が出てくるたびに見ましょう。
日本語でも用語がわからなかったら、辞書を引いて調べますよね?
それと同じで、建築用語もたくさんの専門用語があるので、用語集を買って、調べながら少しずつ覚えていきましょう。
この建築用語集はイラストも多めでわかりやすいですね。
私はこっちの「世界で一番やさしい建築用語」を買いました。
ちなみに、大学の授業をきっちり受けて全部できるようになれば、学科試験を合格するくらいの基礎力は付きます。
ですが、単位を取れればOK、卒業できればOKという状況では、正直ただの時間の無駄なので、授業中にこっそり別なことやってた方がましでしょう。
繰り返しになりますが、一級建築士を目指す学生が行う学科試験対策は、過去問を解いて、自分が知るべきことが何かを把握することです。
トレース、模写をして製図の決まりを知る
学生の最初のうちにすべき製図試験の対策は、トレースや模写です。
なぜなら、学生のうちに必要な作図量をこなしている人が99%いないからです。
具体的な例を言うと、一級建築士の製図試験では、2か月で50枚ほど書いて合格ラインと言われています。
しかし、学生のころに図面をしっかりと書いた枚数というのは、4年で6枚程度です(きくりんの周り調べ)。圧倒的に作図量が足りません。
手書きの作図をひたすらしよう
一方で、どうせ実務ではCADを使うから手で作図することは必要ない、といった意見もあります。
確かに、実務でCADを使って作図することは多いです。
ですが、想像しているよりも、手で作図というかスケッチをすることがとんでもなくあります。4年で6枚程度しか作図していない作図力では、全く歯が立ちません。
この動画は現場監督の手書きスケッチ事例です。現場監督が職人に伝えるのにこのレベルの手書き図面を作図します。
設計者が現場監督に伝えるのに、伝わらない図面を渡すわけにはいきませんので、いかに伝わる図面を書けるようになるかが大切です。
CADは便利な手書きツール
また、CADだとコピぺすればそれっぽい図面が出来上がります。
ですが、手書きで作図をするためには、基本的な寸法や形が頭に入れることが必要です。
何となくでは、手書きで作図することはできません。
CADは非常に便利な作図ツールですが、作図する側の力量が無くても作図できてしまうツールでもあります。
ですので、トレースや模写をたくさんして、製図の決まりを知り、必要な基礎知識を身につけましょう。
おすすめの作図量は、週に1枚書くことです。週に1枚書くと、年間で52枚書けます。年間で52枚も書いたら、1年で大学卒業レベルの作図力が身に着きます。
図面はこの辺りのを模写するのがいいでしょう。
こういった図面集を買うのが大変な方は、一級建築士の製図の過去問を模写しておきましょう。
紙は正直なんでもいいですが、トレーシングペーパーが安いのでいいですね。ダイソーのスケッチブックも、安くてページ数も多いのでおすすめです。
サイズはA3かA2が本当は良いのですが、A2サイズを広げられる机は限られているので、A3かA4が妥当でしょうか。
そうはいっても、作図の手順がわからないよって人は、こちらで解説していますので、興味があればご覧ください。
資格試験では使わないが、実務では必要な力
一級建築士になることと、一級建築士として活躍することは、全くの別物です。
一級建築士として活躍するのに、様々な能力が必要ですが、ここではいくつか抜粋してご紹介しましょう。
建築士になったことを想像して必要な力を考える
建築士として、どうすれば一人前になれるのかをまとめたのが、「新米建築士の教科書」です。
この本には、必要なトレーニング方法や実務で必要なことがまとまっています。
例えば、見た物件や調査した建物を記録する方法や、実務での困りごとの解決方法が記載してあります。
この本は100%買っておいた方がよいです。今すぐ買いましょう。
模型を作ろう
学校の課題でも出題されますが、実務でも模型を作ります。
なぜ模型を作るのかというと、実際に建物として成立しているのか、どんな風に見えるのかを一瞬で確認できるからです。
模型を作れと言われても、正直作り方も何もわからないですよね?
私はこの本を買って模型を作りました。
学生のころは、模型なんてお金ばっかりかかるし、作る意味全然わかんないと思っていましたが、実務では模型があるととても助かります。
BIMが少しずつ普及しているとはいえ、全部の建物をBIMで設計することは考えにくいので、まだまだ模型は必要でしょう。
ですので、模型を素早く作れるようになっておくと、役に立つ時が来ます。
周りを測ってスケール感覚を身に着けよう
これは、学生のころからしてる人は全くいません。ですが、強烈に身になる方法です。
身の周りの物を、とにかくメジャーやスケールを使って測りまくるのです。
そうすると、机の高さや椅子の高さが通常何センチで設計されているのか、座りやすい椅子の高さは実は何センチなのか、ということがわかってきます。
そうやっていろんなものを測ると、トイレの標準寸法や、建具の寸法など、必要な寸法がばっちり頭に入るので、おすすめです。
メジャーはどんなものがおすすめですか、と聞かれることもありますが、おすすめのメジャーはありません。ダイソーなどで売っている安いメジャーで十分です。メジャーは消耗品なので、プロになったら、少しだけ良いメジャーを買いましょう。
ちなみにこちらの本は、日建設計の浦さんという方が、旅をしながら、様々な場所の寸法を測りまくって書いた、備忘録みたいなものです。
この本を読めば、スケール感覚を身に着けるということがどういうことかわかるでしょう。興味があれば読んでみてください。
建物がどうやってできるのかを知る
建築で設計の勉強や、大学の勉強ばっかりしていると、建物がどう作られているのかを具体的に知らない人が多いです。
ですが、建物を設計するうえで、建物の作り方を知らないのは言語道断です。
せめて一般的な建物は、どんなふうに作られているのかは知っておきましょう。
この本はイラストで職人の作業風景などを交えて書いてあり、わかりやすいのでおすすめです。
まとめ
この記事では、「自分も一級建築士を目指している大学1年生です。本当に初心者でどこから手をつけたら良いのかが分からない状態です。建築士になるためのおすすめの参考書や学習方法を教えて欲しいです。」
こんな疑問にお答えしました。
まとめると、過去問で自分が何を知らないか知り、用語集で基本を身につけましょう。製図対策は、ひたすら図面を書いて作図の基礎力を身に着けてください。
この記事を参考に、一級建築士を目指しましょう。