基本設計とか実施設計、詳細設計とか聞くけど、実際に何が違うの?どれも設計でしょ?
こんな疑問にお答えします。
私のことを簡単に自己紹介すると、ゼネコンで10年ほど働いていて、一級建築士も持っています。
この記事はだいたい2分くらいで読めるので、サクッと見ていきましょう。
基本設計と実施設計(詳細設計)の違い
さっそく結論ですが、基本設計と実施設計(詳細設計)の違いは、ざっくり設計するか詳細に設計するかの違いです。
なぜ設計を分けるのかというと、いきなり労力をかけて詳細設計をした結果、やっぱり方向性が違うとか思っていたのと違う、ということになるのを防ぐためです。
基本設計は建て主へのプレゼン
具体的な例を言うと、基本設計は全体的なアイディアを形にして、イメージやコンセプトを図面にします。
スケッチをたくさんしてイメージをわかりやすく表現したり、パースを使ってどんな風に見えるかを共有したりするのが主な内容です。
もちろん、最低限どんな間取りになるかというのがわかる図面は作成します。
実施設計はプロが工事できるように作成
一方で実施設計は、実際に工事ができるように、基本設計で生じていた矛盾を解消していく設計です。
アイディアだけでは、現実問題として実際に建物を建てることはできません。
例えば、基本設計ではシャフトが点検できるかは見ますが、実際にシャフトに配管や配線が施工できるかまでは見ません。
ですが、実施設計ではちゃんと施工できるかどうか、徹底的に検討します。
時には施工業者に問い合わせて、実際に施工できるかを確認することもあるでしょう。
ここまで基本設計と実施設計(詳細設計)の違いについて説明してきました。
まとめると、基本設計と実施設計の違いは、ざっくり設計するか詳細に設計するかの違いです。
基本設計でアイディアやイメージを共有して、施主と設計とで設計方針のすり合わせをし、実施設計で方針を変えずに実現できるよう、実際に工事する上での問題を解決していきます。
では、設計の仕事は基本設計と実施設計だけなのでしょうか?
この2つの設計以外にも、たくさんのことを建物ができるまでにこなしていきます。
設計相談から実際に設計するまでの流れ
実際に建物ができるまでは、多くのステップがあります。
では、それぞれがどんな内容なのかを見てみましょう。
企画立案
ステップ1の設計相談、設計契約は、相談して契約するだけなので、詳細は割愛します。
企画立案ですが、やる内容は大きく分けて3つ。
現地調査は確認事項が多い
現地調査では、ざっと上げただけでも、これだけの量は確認しておかないといけません。
簡単に言うと、残っている図面と現状があっているか確認して、図面だけで検討ができる状態にするのが目的です。
なぜ図面だけで検討できるようにするかというと、何回も現地に行って確認をするのが大変だからです。
何か疑問点が浮かぶたびに現地に行って確認となると、目の前の敷地ならいいですが、山奥などの遠くの敷地だと交通費も時間もバカになりません。
ですので、現地調査では、必要になりそうな情報を一度に確認してしまいましょう。
建築基準法と都市計画法をチェック
法律をチェックするのも、けっこうな量があります。
用途地域によって建てられる建物に制限も出ますし、防火地域であれば構造を耐火構造にしないといけないなどの制限も出てきます。
建築基準法をチェックするのは、建てられる範囲を把握して、次の工程であるボリューム検討をスムーズに行うためです。
それぞれ、確実におさえておかないと確認申請の時にはじかれて、計画が破綻することもありえます。
法律や条例関係は漏れが無いようにしておきたいところですね。
ボリューム検討で建てられる規模を確認
法令チェックをしたら、ボリュームの検討をします。ボリューム検討はボリュームスタディとも言います。
ボリュームチェックをする理由は、建てられる建物の規模を確認するためです。
例えば、マンションを建てたくて土地を買うのに、条例で5階建ては建てられないなどと決まっていたら、マンションを建てられないですよね?
そのため、希望している用途にあった土地なのかを確認するために、ボリュームをチェックをします。
具体的には、
こういった項目をチェックしていきます。
例えばマンションを建てるのにボリュームチェックをする場合、貸し出せる部屋を何部屋作れるかが大切です。
そのため、上記の項目でどれくらいの建物が建てられるかをチェックした後、かんたんな図面を書いて実際に何部屋が貸し出せるかを確認します。
10部屋貸し出せそうなら、10部屋×想定家賃で収益性を確認し、採算がとれそうなら土地を買う、といった流れです。
基本設計
基本設計でやることは、主に5つあります。
簡単に言うと、一級建築士の製図試験でやるような内容+コスト算出をやればOKです。
配置計画、平面計画でエスキス
配置計画や平面計画では、ゾーニング図や機能図を用いて動線を検討します。
なぜゾーニング図や機能図を検討するのかというと、建物と駐車場や外構の関係、廊下と各所室の関係を整理することで、近くにあった方が良い部屋、遠くても良い部屋を整理することができるからです。
それぞれの部屋の関係性が整理されれば、ある程度は部屋の配置が固まってきます。
立面、断面計画で外装検討
配置や平面の間取りが固まってきたら、立面や断面の検討です。
立面は外観を表現するものですから、黄金比を使うなどして美しく見えるように、模型やスケッチで検討し、パースで微調整をしていきます。
外装の仕上や屋根、壁の形状、窓の位置や大きさを検討しながら、建築基準法などの法令に違反していないかチェックしましょう。
断面では、採光や空気の流れ、天井のふところの深さ、窓の高さ、立っている時の視線の位置など様々なものを検討しないければいけません。
仕上計画で内装検討
外部仕上が固まってきたら、内部の仕上検討を開始します。
仕上が複雑な箇所は展開図を書いて見たり、重要な諸室ではパースを書いてみたりすることで、仕上計画がより具体性を増すでしょう。
構造、設備計画を作成して意匠図をチェック
ここまでで大まかな意匠設計ができましたので、ここから構造、設備計画を検討します。
構造計画のチェックポイントは、意匠図通りの柱や梁で構造上持つのか、間柱や小梁を追加しなければならない場所はないか、という点です。
設備計画では、シャフトを点検するルートがちゃんと確保されているのか、必要な設備スペースが確保されているのかをチェックしましょう。
可能なら設備のシャフトを断面で検討すると、整合性の取れた設備図になりますが、実施設計で設計変更になることが多いので、おおまかな部分のチェックだけでOKです。
概算工事費、維持費検討
ここまでで全体の基本設計が完了です。
全体の基本設計ができたら、工事費がいくら程度になるのか、概算して維持費も検討します。
なぜなら、施主も予算が決まっているので、大きく予算をオーバーしていないか確認が必要だからです。
大きく予算をオーバーしているようなら、仕上げのスペックを落とすなり、工事費を落とせるように基本モジュールに沿った設計とするなり、検討が必要になります。
概算工事費や維持費が無理のない計画であることを確認し、ようやく施主に基本設計のプレゼンです。
さらっと書くつもりが、書きすぎてしまいました。この後は実施設計の説明をします。
実施設計
実施設計では、基本設計で検討しきれなかった項目、詳細な納まりなどを検討します。
基本設計で検討した法令から違反しないように、設計変更をこなし、役所などに申請していく流れです。
工事監理、設計変更対応
工事が始まったら、工事監理をしながら設計変更の対応をします。
なぜ設計変更対応をするのかというと、だいたいのお施主さんはそんなにサクサク決めれなくて、工事開始してからやっぱり変えたい、工事で出来上がったものを見てイメージと違った、といった事態になるからです。
そういった事態をある程度想定しながら、実施設計を調整したり、変更できませんよと念押ししたりしながら進めます。
メンテナンス、改修計画
工事が終わるころには、改修計画を立案しておきます。
なぜなら、お施主さんは多くの人が建築の知識をそんなに持っているわけではなく、ほっといても100年程度持つと思っている人が多いからです。
具体的にいうと、防水の寿命が10年くらいで来てしまうことなどは知りませんし、高い金額を払って買った建物の寿命は50年以上は確実に持つと思い込んでいます。
そういった認識の不一致からトラブルにならないように、建築材料の寿命を設計ミスだと言われないようにするために、改修計画をしっかり立てておきましょう。
まとめ
この記事では、「基本設計とか実施設計、詳細設計とか聞くけど、実際に何が違うの?どれも設計でしょ?」
こんな疑問にお答えしました。
まとめると、基本設計は概略の設計でイメージをすり合わせる設計、実施設計は実際に工事ができるように納まりを検討した図面です。
この記事を参考に、設計について理解を深めてください。