いつも将来の建築の資格取得を考えるとき、『一級建築士と一級建築施工管理技士って何が違うんだろう』と悩んでいませんか?
実は、この記事で紹介する『建築士と建築施工管理技士の違い』を読むと、誰でも簡単に違いがイメージできるようになります。
なぜなら、僕は実際に仕事を通して建築士と建築施工管理技士の人と関わり、違いが明確になったからです。
この記事では、建築士と建築施工管理技士の違いや、それぞれの資格取得のメリットをご紹介します。
記事を読み終えると、今後建築士と建築施工管理技士の違いで迷うことは一切なく、自分がどちらの道に進むべきか明確に考えることができます。
建築士とは
設計をするための資格です。意匠・デザイン、構造、設備それぞれの知識を備えた設計者であるという位置付けです。建築士には、一級建築士、二級建築士、木造建築士があります。
上位資格に構造設計一級建築士、設備設計一級建築士があります。それぞれ、構造のスペシャリスト、設備のスペシャリストです。
一級建築士を取得して5年の実務経験が無いと受験できません。
建築施工管理技士とは
工事現場の監督をするための資格です。建築施工のスペシャリストという位置付けです。施工管理技士は建築の他に、菅、土木、電気、造園などがあります。
工事現場全般を監督をする方や、特定の工事のみを監督する方、職人を束ねる職長の方が取得しています。
建築士と施工管理技士の違い
建築士と施工管理技士の違いは、設計の資格か、工事の資格かという違いです。
建築士が施工管理技士の上位資格という認識が一部で見受けられますが、それは勘違いです。
設計と施工で別々の資格であり、どちらが上ということはありません。建築士は設計のことはわかりますが、工事のことはそこまで詳しくありません。
一方で施工管理技士は工事のことはわかりますが、設計のことは詳しくありません。それぞれの適した持ち場で力を発揮することで、建物ができあがります。
どちらを目指すのか、両方取得するのか、やりたいこととのバランスを考えて取得しましょう。
監理技術者として業務が可能な範囲
一級建築士と一級建築施工管理技士では、監理技術者として業務ができる範囲が違います。
ですが、まず監理技術者とは何?という方もいると思うので、そちらから解説します。
監理技術者?管理技術者?
結論から言うと、監理技術者が正しいです。
似たようなものに主任技術者や専任技術者というのがありますが、簡単に言うと、監理技術者が最強です。
長くなってしまうので、詳しくは別の機会に説明します。
監理者も似てますが、監理者はプロジェクトマネージャー的な立場で、監理技術者は工事のマネージャーみたいなものです。
監理技術者の仕事は、施工計画の作成、工程管理、品質管理、その他技術的な管理、施工に従事するものの指導監督です。
業務可能な範囲の違い
一級建築士と一級建築施工管理技士では、一級建築施工管理技士の方が11種類多くの業種で監理技術者になれます。
具体的に言うと、一級建築士は、建築一式、大工、屋根、タイル・レンガ・ブロック、鋼構造物、内装仕上工事の6種類で監理技術者になれます。
一級建築施工管理技士は、上記6種の他に、左官、とび・土工・コンクリート、石、鉄筋、板金、ガラス、塗装、防水、熱絶縁、建具、解体工事で追加で監理技術者になれます。
難易度
難易度は建築士の方が高いです。
合格率で比べると、建築士は10%程度、建築施工管理技士は17%程度です。
もう少し詳しく見ると、一級建築士の合格率は学科で18%程度、製図で50%程度、全体で10%程度になります。
二級建築士の合格率は学科で36%程度、製図で50%程度、全体で24%程度です。
一級建築施工管理技士の合格率は、学科で40%程度、実地で40%程度、全体で17%程度になります。
二級建築施工管理技士の合格率は、学科で40%程度、実地で35%程度、全体で15%程度です。
どっちを取れば良いの?
結論から言うと両方取った方が良いです。
なぜなら、工事も設計のことを理解していないと良いものが作れませんし、設計も工事のことを理解していないと作れないデザインで設計してしまうからです。
もちろん、設計だけのスペシャリストになるという方は、建築士だけで良いと思います。
実際業務で使うのは設計の方だと建築士なので、建築士オンリーでいくのも良いでしょう。
ですが、どちらも持つメリットももちろんあります。
どちらも持つメリット
設計も施工も、お客様・施主から見たら建築のことはなんでも知ってるという見られ方をするので、どちらの知識もある方が信頼を得られます。
信頼は支払いに大きく影響してきます。
建築士が建築施工管理技士を取るメリット
設計者が施工の資格を取るメリットとしては、2つあります。
監理技術者になる建設業区分が多いということ、施工の基本を押さえた設計ができるようになることの2つです。
監理技術者の業務範囲が広くなる
1つ目は監理技術者の業務範囲が広くなるということですが、既に記載した通り、6業種が17業種になります。
監理技術者は施工計画や工程、品質を管理できる能力があるので、設計通りに工事が進んでいない箇所がわかるようになります。
設計通りにいかない箇所が素早く把握できれば、リカバリー案を作るのもスピーディーにでき、余裕をもって管理することができます。
施工の基本を押さえた設計ができる
2つ目の施工の基本を押さえた設計ができるようになるということですが、これは非常に大切です。
実際にあった話なのですが、若い建築士の方がこんなデザインにしたいと打ち合わせしていたのですが、ベテランの施工者の方がこう言いました。
「そのデザインにすると、予算に入っていない大きな人件費がかかりますが、その費用は誰が出すのですか?」
結局、設計者はデザインを譲らず、お客様はそれ以上予算が無いので、工事自体が中止になってしまいました。
工法やデザインによって大きくコストが変わってしまうのですが、それを理解していなかったために、工事を中止にするという、お客様にとって良くない結果になってしまいました。
このような失敗を防ぐのに、設計者が施工の知識を得るのは非常に有効です。
建築施工管理技士が建築士を取るメリット
反対に施工者が設計の資格を取るメリットは、設計者の意図を理解して、実現可能な方法を提案できるようになるということです。
デザインというのはとても緻密に検討されています。
設計者の提案しているものが現実的に厳しくても、本当に実現したいことのエッセンスを抽出することで、新たな案を提案できます。
折衷案でどちらも妥協した案を出すのではなく、どちらの言い分も叶える案を出せるようになります。
それができる施工者は非常に限られているので、お客様や設計者から絶大な信頼を得ることができます。
特に無知なお客様だと、一級建築士とそれ以外という区分で対応を明らかに変える人もいます。
一級建築士と一級建築施工管理技士のどちらも取りましょう。
先に取るのはどっちから?
結論から言うと、一級建築士から先に取得した方が良いです。
理由は2つあります。
一級建築士の方が実務経験が少なくて早く受験できるからと、学科試験が免除されるからです。
ですが、別にどちらが先になっても不利になることはありません。
取れる方から取ってしまいましょう。
一級建築施工管理技士が先の場合
一級建築施工管理技士を先に取得した場合、デメリットはありませんが、特に大きなメリットもありません。
強いて言えば、一級建築士を勉強する時に、施工の科目の勉強がかなり少なくてすみます。
学科は独学で結構いけますが、実地はちょっと癖があるので、1級建築施工管理技士の実地試験対策↓のような場所で記述を添削してもらうのも良いです。
学科は↓でOK。
一級建築士が先の場合
一級建築士を先に取得した場合、一級建築施工管理技士の学科試験が免除されます。
勉強する時間を節約できるので、学科試験が免除されるのはとても助かります。
だからといって、必ずしも一級建築士を先に取ることにこだわらず、取れる方から取ってしまいましょう。
まとめ
この記事では、建築の資格取得を考えるとき、『一級建築士と一級建築施工管理技士って何が違うんだろう』と悩んでいる方に向けて、『建築士と建築施工管理技士の違い』を、誰でも違いがイメージできるようにをご紹介しました。
建築士と建築施工管理技士の違いは、設計の資格か、工事の資格かという違いです。
どっちを取れば良いのかというと、両方取った方が良いです。
なぜなら、お客様はどちらの知識も持っていて当然と考えているので、どちらもあると信頼を得られるからです。
この記事が、将来どんな道を進むのかを決める助けになれば幸いです。