『建築士試験で矩計図(かなばかりず)を書けるようになりたいけどどうすれば良いの?』
『そもそも矩計図(かなばかりず)って何?』
と悩んでいませんか?
この記事では、一級建築士や二級建築士になりたい方に向けて、矩計図(かなばかりず)に書くもの、矩計図(かなばかりず)の書き方や手順をご紹介します。
この記事を読むメリット
- 矩計図(かなばかりず)に書くべきものがわかる
- 矩計図(かなばかりず)の書き方や手順がわかる
記事の信頼性として、自己紹介を簡単にします。
私は建築学科の大学院を出ており、ゼネコンで10年ほど働いています。
一級建築士も取りました。
なので、この記事の信頼性はあると思います。
それでは、ご覧ください。
矩計図(かなばかりず)とは
矩計図(かなばかりず)とは、断面図の詳細図です。
平面図の詳細図は平面詳細図と呼びますが、断面図の詳細図、特に基礎から屋根までの外壁部分の納まりやサッシ部分のおさまりを詳細に表現したものを矩計図(かなばかりず)と呼びます。
矩計図(かなばかりず)に何を書くか
矩計図(かなばかりず)には、サッシ取り合いのおさまり、屋根と外壁のおさまり、基礎から屋根までの開口部の位置などの、外壁にまつわるおさまりを書きます。
なぜなら、外壁面には注意すべき要素も多く、おさまりが複雑になるからです。
たとえば、屋根と外壁おさまりやGLと外壁の取り合いではどのように防水するのかがわかりますし、サッシの天井との取り合いなどでは内装の仕上げのおさめ方がわかり、外壁にからむ要素はたくさんあります。
矩計図(かなばかりず)ではこれらを同時に表現できるため、一覧性が高いという特徴もあります。多くの情報を入れ込むと、良い矩計図(かなばかりず)になります。
ですが、平面詳細図や天井伏図で表現できるようなことは、わざわざ書くと訳がわからない図面になってしまうので注意が必要です。
どこを矩計図(かなばかりず)に書くか
矩計図(かなばかりず)は、要素の多い複雑なところを書きます。
なぜなら、要素の多い部分は要素どうしの継ぎ目である取り合いの部分が複雑になり、通常のおさまりではおさまらないことが多いからです。
基本的な配置図と複雑なおさまりの2断面を書けると良いです。
異なる断面形状の部分を何枚か書けることが望ましいですが、全部書くのは時間の都合上難しいのが現実です。
迷ったら一番複雑なところを書いておけば間違いありません。
矩計図(かなばかりず)の作図手順
矩計図(かなばかりず)を書くのにも手順があります。
基本的には平面図や断面図と同じような手順になります。
最初に基準線を書き、駆体・構造体を書いてから、外装・内装下地、最後に仕上げを書いていきます。
慣れないうちは手順どおりに書くのをおすすめしますが、慣れたらもっと速く書けるよう自分なりの書きやすい手順にするのが良いでしょう。
①通り芯・FLライン・階高
一番最初に基準となる通り芯・FLライン・階高を書いていきます。
通り芯は矩計図(かなばかりず)だと少ししか書きませんので基準となりにくいですが、外壁芯などを書くと、より振り分けがわかりやすくなるのでおすすめです。
FLラインは断面図と同様ですが、建具の位置や目地の位置を把握するのに重要ですので、必ず書きましょう。
②駆体・構造体
基準線を引いたら、駆体や構造体を書いていきます。
断面図と同様ですが、床から書いて梁、壁の順に書いていくと良いです。
駆体の断面は太くはっきりと書き、後からこすれても消えないようにしましょう。
断面図をすでに書いている場合は、断面図との整合性に注意してください。
スラブ厚さや耐圧盤の厚さは、基本的に断面図と同じ寸法で統一できるように意識しましょう。
基礎や梁、地中梁は地下から一気に書いていくと早いです。
テンプレートを使ってまとめて書いてしまいましょう。
駆体の位置は仕上げの素材に応じて下地が変わり、下地の種類に応じて欠きこむ必要も出てきます。
タイルや石の下地の場合などで、構造体を欠損させないでください。
③仕上げ下地(壁・床・天井)
駆体・構造体を書き込んだら、仕上げの下地を書き込んでいきます。
内装の仕上げ下地であれば、スラブtoスラブの壁下地、天井下地、天井下壁下地、床下地の順に書いていくと、各所のおさまりが自然に書くことができます。
なぜなら、施工手順も同様の手順だからです。
LGSや木軸などの壁下地
壁下地を書くときは木軸でもLGSでも同様ですが、ボードまで書いてしまうと天井下地を書くときに細かい寸法を気にしなくて良いので、ボードまで書きましょう。
ボードまで書くことで、壁と天井のおさまりがはっきりします。
開口部のまぐさなどもしっかり表現してください。
石やタイルの仕上げだと、乾式と湿式で下地寸法が変わりますので注意しましょう。
吊りボルトや野縁などの天井下地
天井下地を書くときは、下がり壁やシャッター下地、垂れ壁の下地に注意してください。
重量物を支える下地は天井の下地と違い強固な作りにしますので、当然書き分ける必要があります。
斜め材を用いて振れ止めとしたり、吊り材を堅牢なものに変えるなど、水平変異を抑えて地震時に天井が壁にぶつからないように対策をしましょう。
天井のふところが深い場合は、吊りボルトに斜め材をつけて剛性を高めることも有効ですが、天井と壁の間にクリアランスを大きめに設けることも有効です。
二重床やウッドデッキなどの床下地
床下地を書くときは、仕上げ代を考慮してFLから逆算して書いてください。
スラブから積み上げで書いてしまうと、仕上げの寸法がずれてくるので注意しましょう。
床下地は二重床やウッドデッキ、置き床木下地を書くことが多いですので、標準的なおさまりは頭に入れておくとよいです。それ以外は駆体・構造体である床コンクリートがほとんどになります。
屋上の防水部分は、断熱材を敷いてシート防水とするのか、アスファルト防水とするかでおさまりが変わってきますが、屋上緑化の時は特におさまりが複雑になるので注意してください。
住戸の床だと床レベルの要求水準が高いので、必要に応じてセルフレベリングなどの使用も検討しましょう。
④仕上げ(石・タイル、サッシ・建具、家具、設備機器)
仕上げの下地を書いたら、本格的に仕上げを書いていきます。
基本的には施工する手順と同様です。
外装であれば、建具を書いて、ガラスなどを書いていきましょう。
内装であれば、壁などの下地の記入が終わっているので、家具や設備機器を書いていきます。
壁床天井の仕上げは、基本的に厚みがほとんどないので書きません。
厚みがあるタイルや石などの仕上げは書きます。
サッシ・建具
サッシ・建具を書くタイミングは様々あります。
外装の建具であれば、駆体を書いたらすぐに書くのも良いでしょう。
内装であれば、下地を書き終わってないと建具を書けないので、下地が書き終わったタイミングで書くことになります。
内装と外装をまとめて書くならこのタイミングで、内装と外装を別々に書くなら駆体のあとに外装建具、その他はこのタイミングで書くと良いでしょう。
外装は水が室内に侵入しないように、取り合い部のおさまりの表現に注意してください。
内装はまぐさとの位置関係や見切りの位置に注意は必要ですが、その他はさほどでもないので、さくっと書いてしまいましょう。
キッチンや戸棚などの家具
家具はキッチンや吊り戸棚、書棚などを書くのが一般的です。
吊り戸棚は吊りボルトで吊ることになりますが、他の家具は自立が基本になります。
必要に応じて、ライニングや膳板・甲板やカウンターなどもここで書いていきましょう。
ものによっては二重床などに置くことになりますが、二重床上に重い家具を置くと床がたわむので、重量家具の床下地は補強しておくのが安心です。
キュービクルや発電機、ポンプ、水槽などの設備機器
設備機器はキュービクルや水槽、ポンプなどを書くことになりますが、詳細な図を書く必要はありません。
メンテナンスのスペースが確実に確保されているのか、振動対策はどうなっているのかなどが表現されていると良いです。
適当な寸法で設計していると、この段階で階高を変えなければいけなくなるので、事前に余裕をもった寸法で検討しておきましょう。
⑤見えがかり
仕上げを書いたら、見えがかりの線を書いていきます。
見えがかりはたいした量もありませんし、時間が間に合わなくて書ききれなそうであれば省略しましょう。
見やすくしたり、わかりやすくすることがメインなので、ここの断面は断面だけだとわかりにくいというような場所は積極的に書いてください。
⑥ハッチング、寸法、文字
最後に文字や振り分け寸法、ハッチングなどを書いていきます。
室名や仕上げ名称などの文字は、矩計図(かなばかりず)に必要なので必ず書いてください。
振り分け寸法は状況によりますが、建具の位置などは振り分け寸法を記入した方が良いでしょう。
床の段差や下がり天井の寸法も、記入してください。
ハッチングは見やすくするためなのでなくても良いですが、時間があれば、駆体、断熱材、土、程度はハッチングするとかなり見やすくなります。
最後の仕上げなので、見やすくなることはとことん書き込みましょう。
図面を速く書けるようになりたい方はこちらもどうぞ。
まとめ
『建築士試験で矩計図(かなばかりず)を書けるようになりたいけどどうすれば良いの?』『そもそも矩計図(かなばかりず)って何書くの?』と悩んでいて、一級建築士や二級建築士になりたい方に向けて、矩計図(かなばかりず)に書くもの、矩計図(かなばかりず)の書き方や手順をご紹介しました。
矩計図(かなばかりず)で伝えるべき内容は、基礎から屋根までの外壁部分の納まりやサッシ部分のおさまりです。
矩計図(かなばかりず)は最初に基準線や補助線を書き、駆体・構造体を書いて、外装・内装の下地、最後に仕上げを書いていきます。
基本的に手順どおりに書くのをおすすめしますが、慣れたらもっと速く書けるように工夫するのが良いでしょう。
参考にして、矩計図(かなばかりず)を書くことに慣れてもらえたら嬉しいです。