一級建築士の施工で鉄筋の問題がよくわからない。継手が位置とか間隔とか種類とかもうわけがわかんない
こんな疑問にお答えします。
この記事を読むメリット
- 鉄筋の継手の種類がわかる
- 継手を設置して良い位置や間隔がわかる
- 重ね継手の継手長さがわかる
私のことを簡単に自己紹介すると、ゼネコンで10年ほど働いていて、一級建築士も持っています。
この記事はだいたい2分くらいで読めるので、サクッと見ていきましょう。
鉄筋工事の継手の種類
鉄筋工事の継手は種類が3つあります。
ポイント
- 機械式継手
- ガス圧接継手
- 重ね継手
それぞれ順番に解説していきましょう。
機械式継手
機械式継手とはメカニカルにつなぐ継手のことで、ネジにトルクをかけて止めたり、カプラーと呼ばれる専用のスリーブに専用のモルタルをつめてつないだりする継手です。
機械式継手のメリットは簡単に機械式継手の資格を取れる点と、スペースがあまりなくても使える点でしょう。
一方で、デメリットはコストが高いことです。
便利だけど高いというのが、一般的な機械式継手の印象でしょう。
ガス圧接継手
ガス圧接継手は、ガスで鉄筋を温めて、圧力をかけて鉄筋同士をくっつける方法です。
ガス圧接継手でよく出題されるのは、施工と検査になります。
ガス圧接継手の施工
ガス圧接継手の施工は下記のような流れで施工します。
ポイント
- 鉄筋カット(試験用も採取)
- 切断面の検査
- 鉄筋の圧接
- 圧接部の検査
鉄筋のカットでは、鉄筋に熱を加えると性質が変わってしまうので、熱を加えないでカットします。ですので、サンダーなどではカットせずに冷間直角カッターというものを使い切断し、グラインダーで表面をつるつるにします。
この時に、試験が必要な場合は試験片の採取が必要です。これは実際に抜き取って引張試験を行うことで、圧接がちゃんとできてることを証明します。1作業班あたり3本のロットを採取して引張試験を行い、圧接部分以外で破断したら合格です。
切断面の検査は、カット面がキレイでつるつるだったらOKです。端部が変形してたらキレイに圧接できないので、再度カットします。
この後に鉄筋の圧接をし、圧接部分の検査をします。外観検査と超音波検査の両方に合格すれば圧接完了です。
ガス圧接継手の外観検査
ガス圧接継手の検査には外観検査と超音波検査があります。
外観検査の基準としては、圧接部のふくらみの幅、長さ、芯ずれなどがあり、すべての基準を満たしてはじめて合格です。
以下に検査基準を載せますので、覚えてください。
項目 | 手動ガス 自動ガス 合否基準 | 天然ガス 合否基準 |
---|---|---|
ふくらみの 直径 | 1.4d以上 (SD490は 1.5d以上) | 1.6d以上 |
ふくらみの 長さ | 1.1d以上 (SD490は 1.2d以上) | 1.2d以上 |
圧接面の ずれ | 1/4d以下 | 1/4d以下 |
鉄筋の中心軸 の偏心量 | 1/5d以下 | 1/5d以下 |
折れ曲がり | 2°以下 | 2°以下 |
片ふくらみ | 1/5以下 | 1/5以下 |
垂れ下がり へこみ 焼き割れ | なし | なし |
有害な欠陥 | なし | なし |
ガス圧接継手の超音波探傷試験
超音波検査はほぼ出ないのであんまり勉強しなくて大丈夫ですが、検査ロットだけは覚えましょう。
試験ロットの大きさは、同一作業班が同じ日に施工した圧接箇所で200個程度ごとに分けます。
その試験ロットの中から30か所のランダムサンプリングをして、超音波探傷試験を実施します。
不合格が1個以下ならロットは合格で不合格部分のみの修正、2個以上の時はロットが不合格となり全数検査が必要です。
重ね継手
重ね継手とは、鉄筋を並べてつなぐ継手のことです。
ピッタリ並べて結束することで、鉄筋の応力をスムーズにつなげます。
重ね継手が可能な鉄筋の径
重ね継手はどの鉄筋にでも使用してよいわけではなく、使用する鉄筋の大きさに応じて重ね継手が可能か決まります。
なぜなら、大きな鉄筋では負担する応力が大きくなりすぎて、重ね継手では負担しきれなくなるからです。
では、具体的にどれくらいの大きさまで重ね継手が可能なのかというと、D19までが一般的です。
ですので、D19以上は圧接継手や機械式継手にすることが多いです。
重ね継手の長さ
重ね継手では、重ねる長さがながければ長いほど1本の鉄筋のように応力を伝えます。
ですが、重ねる長さが短いと十分に応力を伝達できません。
そのため、重ねる鉄筋の長さが決められています。
この重ね継手の鉄筋を重ねる長さは、鉄筋の種類やコンクリートの設計基準強度、鉄筋のフックのある無しで変わります。
フックがある方が継手の長さは短くて良く、設計基準強度が高いほど継手の長さは短くてよく、鉄筋の強度が高くなるほど継手の長さは長くすることが必要です。
鉄筋の種類 | コンクリートの 設計基準強度 | L1 フック無 | L1h フック有 |
---|---|---|---|
SD295A、B | 18 | 45d | 35d |
21 | 40d | 30d | |
24 27 | 35d | 25d | |
30 33 36 | 35d | 25d | |
SD345 | 18 | 50d | 35d |
21 | 45d | 30d | |
24 27 | 40d | 30d | |
30 33 36 | 35d | 25d | |
SD390 | 21 | 50d | 35d |
24 27 | 45d | 35d | |
30 33 36 | 40d | 30d |
鉄筋工事の継手を設置する位置
鉄筋の継手の位置はある一定の範囲内に設ける必要があります。
なぜなら、鉄筋工事において、継手は構造上の欠陥になる可能性があるからです。
たとえば、柱の継手は中央部分に設け、梁の継手は上端筋は梁中央付近、下端筋は柱付近に設けると決まっています。
具体的な位置は画像の通りですが、簡単にいうと応力が少ない部分に継手を設けるというのが原則です。
継手は応力の少ない位置に
柱の応力は柱際の根本の部分が最も大きいので、できるだけ応力がかからない柱の中央付近ということになります。
応力の少ない部分に継手を設けないといけないので、同様に、梁の上端筋は梁の中央部分、梁の下端筋は中央付近をさけて端の方に継手を設置しなければいけません。
一方で、基礎梁は通常の梁とは逆に、上端筋は端の方、下端筋は中央付近に継手を設置します。
この理由は、基礎梁は通常の梁とは違って土圧を受けるため、応力のかかる方向が反転するためです。
鉄筋工事の継手の間隔、隣り合う継手の位置
鉄筋工事の継手は隣の継手と近い位置に設置してはならず、間隔をあけないといけません。
なぜかというと、継手は鉄筋の弱点となりやすいので同じ位置にあると弱点が固まってしまうからです。
たとえば、弱点が一箇所集中していたら、何かがあって弱点に力が集中してしまったら崩壊するでしょう。
しかし、弱点となる継手の部分を間隔をあけてずらしてあげることで、弱点が一箇所に固まらず、すごく弱いという場所がなくなります。
ですので、継手は間隔を空けないといけません。
では、どれくらい空ける必要があるのかというと、継手の種類によって違います。
機械式継手の間隔
機械式継手の間隔は、中心間の距離が400mm以上かつカプラーの長さ+40mm以上です。
ガス圧接継手の間隔
ガス圧接継手の間隔は400mm以上必要です。
重ね継手の間隔
重ね継手の間隔は重ね継手の継手長さ×0.5以上です。
フックありだと長さが若干変わりますが、基本的に式は同じなので気にしなくても大丈夫です。
まとめ
この記事では、「一級建築士の施工で鉄筋の問題がよくわからない。継手が位置とか間隔とか種類とかもうわけがわかんない」
こんな疑問にお答えしました。
まとめると、継手の種類は3種類を覚えておけばOKです。
ポイント
- 機械式継手
- ガス圧接継手
- 重ね継手
継手の位置や間隔、外観検査の内容や継手長さなどを把握してください。
この記事を参考に、一級建築士試験の施工で鉄筋工事を攻略しましょう。